2013年11月3日日曜日

次回の学習会は11月5日(火曜日)18時30分からです


1030日開催の学習会(「大学入試制度を考える〜教育再生実行会議を受けて」)に参加された皆さん、ご苦労様でした。とくに、報告者の方、報告お疲れ様でした。簡潔にまとめられていて、わかりやすく、大変勉強になりました。

次回以降も、駒場祭にむけて、教育をテーマに学習会を続けていきます。次回は下記のとおりです。

〇日時:11月5日()18:30~

〇場所:キャンパスプラザB312(部室)

〇学習会のテーマ:教育について

〇参加費:無料

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 新入会員を募集しております。一年生の方や、初めてこのブログを読んで関心を持った方など、ご自由にご参加ください。当サークルの日頃の活動の雰囲気を知りたいという方の飛び入り参加も大歓迎です。事前の登録等も必要ありません。途中入退出も自由です。お気軽に、部室にお越しください。なお、部室の場所がわからない場合には現社研のホームページ上にある連絡先にメールをしていただきますよう、お願いします。

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さて、1030日に実施された学習会の内容について軽く触れたいと思います。

現社研の前回(10月30日実施)の学習会では「大学入試制度を考える〜教育再生実行会議を受けて〜」と題した報告がなされました。まず、報告者は報告の背景として二点の動向を挙げます。すなわち、政府の教育再生実行会議が大学入試改革について論じていることと、二次試験をペ―パー試験から「人物評価重視」型の試験へと移行させる動きがあることです。その二点の動きに対して、報告者はそもそも現在の入試制度はそんなに問題となっているのか?問題となっているとすれば何を改善すべきなのか?を問います。

言うまでもなく、大学は教育基本法7条に規定されているように真理探求の場です。そのような大学において入試制度は基本方針として、①能力・適正の原則、②公正・妥当の原則、③高校教育尊重の原則があり、それらに立脚した入試制度が求められます。入試制度は明治維新後の学制から始まり、旧制高等学校+帝国大学、そして戦後の新制大学への改組へと、様々に変遷しました。特に戦後の入試制度は進学適正検査、能研テスト、共通第一次学力テスト、大学入試センター試験へとめまぐるしく変わりました。

そして、いま、安倍政権のもとでの教育再生実行会議によって、大学入試制度が大きく変わろうとしています。その特徴として、学力到達度テストの導入、センター入試の改革そして「人間力」の重視があります。すなわち、高校在学中に学力到達度テストを実施し、センター試験を一点刻みに区切られていたものをランク表示に変更、センター試験を複数回受験可能にする、そして二次試験では面接や論文を重視する、などです。これらの提案は大雑把にまとめれば、「知識」偏重型から「人物・人間力」重視型への転換だといえるでしょう。

しかし、報告者はそもそもそのような「人物・人間力」重視への入試試験への改組が必要なのか、と疑問を投げかけます。日本の教育水準はPIAAC(国際成人力調査)をみても、日本は読解力1位、数的思考力1位、IT問題解決能力10位(OECD平均を上回っている)を維持していることから考えても、現状の高等教育は「失敗」していないと報告者は指摘します。そもそも入試改革の必要性がそれほどあるのか疑問だというわけです。

そうした現状を踏まえて、教育再生実行会議の提案には様々な問題点があることを報告者は指摘します。すなわち、面接重視で「人物」が測れるのか、統一試験が幅広い学力層をカバーできるのか、AO・推薦入試は失敗例も多いのではないか、就職にいかに有利であるかという視点にのみ固執しているのではないか(そもそも大学は就職予備校でない)、「学力のみで合否を判断するのは不適」との意見もあるが、では「学力」よりも適合なものさしは存在するのか、というわけです。

そして、大学とはそもそも就職予備校ではなく、「学問の府」であり学術研究を中心に据えるべきであり、あくまでも学問的素養をベースに据えることを手放してならない。それゆえに、入試制度を、教育再生実行会議が主張するところの「人間力」なる不明瞭で謎めいた観念のもとで、面接重視に変更することに危惧を報告者は表明します。せめて小論文、口頭試問、ディスカッションの導入などの、知能面を測るものさしとしてある程度適合的な入試制度の導入にとどまるべきであるというわけです。

そのようなわけで、「人間力」あるいは「志(こころざし)」などを重視するような入試制度ではあってはならず、たしかにAO・推薦入試への統一的な学力尺度の導入や論文試験などのより知能面での評価を導入しようとしている点は評価できるものの、学力・知識の軽視や大学の「就職予備校」化を進行させる要素が強い教育再生実行会議の提言の有り様は非常に問題が多いと批判しました。

以上、報告を簡単にまとめてみました。入試制度「改革」は現在進行中の動きであり、とくに教育再生実行会議がどのような答申を出していくのか、注視していく必要があります。現社研では今後もこのテーマを引き続き取りあげていきたいと考えます。

【文責:飯島】