2007年6月17日日曜日

これまでの活動の報告

高橋です。以下の文章は明日から撒くビラの裏面に掲載される予定の文章です。これまでの報告にもなりますのでここに掲載します。ご参考までにどうぞ。

これまで行った「格差社会」論連続企画の報告


 現代社会研究会では、22日の公開イベントに先立ち会内で自主研究会を二回ほど開催しました(6月3日と17日)。そこでは、22日の講師である中西さんと雨宮さんの著作の紹介と検討、「格差社会」について、肯定派と否定派(格差社会が存在することを前提に、それを容認するか是正すべきかとする立場)に別れてのディスカッション、マルクス経済学(?、古典派経済学批判経済学ともいえる)を使った近代経済学批判、労働経済学大御所ロナルドドーア氏著作「働くということ-グローバル化と労働の新しい意味 」の要約と批評といった、非常に濃い内容をほぼ無理やり詰め込みました。消化不良の感は否めませんが、時がたてばしっかり消化され、ちゃんと体力を形成することでしょう。以下軽くそれぞれの特徴的な出来事を報告します。22日の企画のご参考になれば幸いです。


6月3日 著作の紹介と検討、ディスカッション

著作の紹介 

雨宮さん「生きさせろ」(太田出版2007)と中西さん「<生きにくさ>の根はどこにあるのか」の内容をそれぞれの報告者が報告しました。主な論点としては、雨宮さんは、若年層の置かれた状況が、すでに生存が脅かされる程の領域に突入しているといった現実と、その現実に抗して立ち上がっている若者を紹介しているというものでした。中西さんの著作では、過剰消費社会において破壊された感性が虚無感を埋めるためにプチナショナリズムに走る傾向を生み出し、それがもたらす窒息感に自らの生存を放棄してしまう心的システム状況が国家、市場をとおして個々人に強いられていると主張されているといったものでした。

ディスカッション

肯定派の主張は「格差社会」は、自然社会と人間社会は同じで優生思想は合理的。エリート(勝ち組)が社会を引っ張る方が効率的。社会に文句なんか言わないで自分の好きなことをして能力を発揮しろといったもの。それに対する否定派の主張は、「格差社会」は社会において普遍的に認められるべき生存権や人権を破壊する。人間社会は自然社会とは違う、エリートというが、努力した結果の格差が25倍という数字の出ているアメリカの現実をどう考えるのか、能力を発揮しようにも日々の生活を維持する賃労働に追われ、発揮できる条件などない、といったものでした。結果は、中立な審判団2名の判定により肯定派の勝利に終わりました(2対0)。論争技術を向上させる必要性と現状肯定の強さを感じました。


6月17日 サークル員の研究発表と著作紹介

研究発表

近代経済学の原理を紹介した後に、マルクスの再生産表式(資本論)を説明した後、再生産表式による近代経済学批判を展開する予定でしたが、周りのサークル員の理解が時間に勝てず、今後の課題となりました。

著作紹介   

ロナルド・ドーア氏の著作の紹介が担当者からなされました。ILOの重要性、新自由主義がいかに現実から遊離した主観的な政策であるか、などが報告されました。また著者が中国の市場経済と国家の関係に注目していることから、市場社会主義の議論が出て、ニューケインジアンとして有名なスティグリッツと同様であるといった話が出されました。その他にはマレーシアのマハティール首相が行った金融資本の統制が上手くいった事例の紹介と、格差社会には一定の資本統制が有効であるといった意見が出されました。